映画俳優を一度だけ・・・ その2

ウィリアム・ハートは、まずなによりも"映画的なる"俳優だと思います。

アメリカの強烈な個性派の俳優たちはほとんどが例外なく舞台経験を積んだ人たちであることが多いのですが、ウィリアム・ハートもまたケン・ラッセルの『アルタード・ステーツ』で映画デビューする前は演劇の世界に身を置いていたのです。

しかし、一見萢洋とした風貌と個性の中からにじみ出る動物的とでもいえる彼の強烈な存在感は、私にはなによりも映画でこそ強いアピールを放つように思えるのです。

『アルタード・ステーツ』と『蜘蛛女のキス』を別にすれば、『白いドレスの女』にしろ『再会の時』にしろ、あるいは『愛は静けさの中に』や『アリス』にしろ、彼の演じる役というのはごく普通の男性像ばかり。

それなのに映画が終ってみると、私たちはウィリアム・ハートという男優のはっきりとかたちを成さない強い存在感を潜在的意識の中にインプットしてしまうのです。

それはきっと、彼がごく一般的な男性像の中に、いわば男たちの生の象徴ともいうべき神話的男性像を創造してしまうからなのでしょう。

だからヴィム・ヴェンダースはひょっとしたら、ウィリアム・ハートの中のそうした輕を感じとって『夢の涯てまでも』のヒーローに彼を選んだのかもしれません。

じつは『夢の涯てまでも』とフォルカー・シュレンドルフの『ボイジャー』とのあいだに、ウィリアム・ハートとサム・シェパードをめぐる主役交代というエピソードがあったのですが、シェパードに比較してウィリアム・ハートはこの映画で充分にその魅力を引き出されていないのでした。

ヴィムの共感はむしろ脇役のサム・ニールに向かっているのです。

盲目の母がみた夢を映像化しようと世界を旅する放浪者トレヴァー。

この未来への苦悩を背負ったヒーロー役に、ウィリアム・ハートはなぜか呆然自失しているように私には思えてならないのです。

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